生態系を自然の状態に近づけるため、自然に極力近い素材を用いて護岸等を築く工法。治水を優先して直線化した河道を、再び蛇行させることで多様な生物が生息できる環境を取り戻すための河川工法として、1970年代にスイスやドイツで始まった。コンクリートに代わって石組みで護岸を築いたり、川床に岩を置いてよどみをつくるなどして、治水と環境を調和させることをめざす。86年、西日本科学技術研究所所長の福留脩文が日本に紹介し、その後多自然型川づくりとして河川行政の指針に取り込まれた。その事業名にちなんで、多自然工法とも呼ばれる。河川工法として始まったが、98年に屋久島の参道を整備するために近自然工法が導入され、初めて登山道がつくられた。国立公園や森林の整備手法など河川事業以外にも応用されている。