土砂崩れのうち、地層内部の深い部分から、岩盤ごとえぐり取られるように崩落する現象のこと。長い時間をかけて風化、変形した岩盤の亀裂に、豪雨などによる大量の雨水がしみこみ、脆弱(ぜいじゃく)化した結果、地下で高まった水圧によって岩盤ごと大量の土砂が崩落する。厚さ1~2メートル程度の表土層だけが崩落する表層崩壊(surface collapse)と比べて、大規模な土砂崩れとなり、及ぼす被害も大きくなる。また、表層崩壊が、森林の保全などで予防措置が取れるのに対し、深層崩壊は現在のところ、予防手段がない。近年、ゲリラ豪雨や梅雨の記録的な大雨が増えるとともに、各地で大規模な土砂崩れが起きているが、深層崩壊はその原因の一つとされる。国土交通省は、2009年から、深層崩壊の起きる恐れのある地点の調査を開始した。大型被害としては、09年8月、台風8号により台湾南部の高雄県小林村で深層崩壊が発生して村が埋まり、約440人が死亡した例がある。日本でも1997年に、鹿児島県出水市で深層崩壊による土石流により死者21人を出した。また、鹿児島県南大隅町で2010年7月4日~8日にかけて7回発生した土石流も、6月12日から約2週間で1000ミリを超えた集中豪雨を原因とする深層崩壊が引き起こした災害であった。