原子力基本法は、1955年に制定された日本の原子力政策の基本となる法律で、「原子力の憲法」とも呼ばれる。第2条(基本方針)では原子力の利用について「平和の目的に限り」と明確にうたっているほか、「民主、自主、公開」からなる原子力平和利用三原則を定めている。2012年6月20日、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、新たな原子力規制組織をつくるため成立した原子力規制委員会設置法では、同時に付則として原子力基本法第2条に対する修正が盛り込まれた。具体的には、「安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする」という一文が追加された。これは原子力規制委員会設置法との整合性を図るための修正であったが、ここに含まれる「我が国の安全保障に資する」との表現が、核の軍事転用へと拡大解釈されかねないとして問題視されている。こうした指摘を受けて、参議院環境委員会では「非核三原則」を侵すものではない旨の付帯決議がなされたほか、政府も非核三原則を堅持するという答弁書を閣議決定した。ただし、原子力規制委員会設置法案の提出から成立まで実質4日間という短期間の審議だったこともあり、重大な変更が十分な議論を経ずに行われたとの声も上がっている。