中空の円柱を海流や潮流など水の流れで揺らすことによって電気を得る、新しい潮流発電(tidal current power generation)システム。岡山大学の比江島慎二(ひえじましんじ)准教授らが開発を進め、「振り子を使った新型潮流発電」などの呼び名でも発表している。(1)水より軽い巨大な中空円柱の下端を回転軸に固定して水中に沈め、この軸が水流と同じ方向を向くようにすると、(2)障害物にぶつかった水流は左右交互に周期的な渦をつくるため、円柱は水流に対して左右に揺らされることになる。(3)この際、円柱自身の浮力が復元力として働いているため、左に渦ができるタイミングと右に渦ができるタイミングの間に、円柱はまっすぐの位置に戻ろうとする。(4)こうした一連の動作が繰り返されることで、円柱は振り子のように左右に振動するようになり、(5)この往復運動から得る回転力を滑車やベルトで発電機に伝え、電気をつくりだす。従来の潮流発電の主流は、水流でプロペラや水車を回転させる方式のため、構造的に複雑でコストが高く、腐食や漂流物を巻き込むなどして壊れやすいうえ、魚などの生物を傷つけてしまう問題点もあった。対して、海中に円筒を沈めて振り子運動をさせるだけというシンプルな構造は、コスト面でも耐久性でも、また海中生物への影響の面でも、従来の潮流発電がもつ問題点をクリアしている。計算によれば、長さ20メートルの振り子を秒速5メートルの水流の中に置いたとすると、直径100メートル超の巨大風車による風力発電や、同じサイズのプロペラ式潮流発電と同等の8300キロワットの電力を得ることができる。