理化学研究所仁科加速器研究センター(埼玉県和光市)とサクラ育種家のJFC石井農場(山形県山形市)が共同開発したサクラの新品種。2010年1月14日、同センターの阿部知子・生物照射チームリーダーが発表。「山形13系敬翁桜」という品種の枝に加速した炭素イオン(重イオンビーム)を照射して、人為的に突然変異を誘発。X線やガンマ線などの放射線育種ではおよそ10年を要するところを、わずか4年で品種登録に至った。露地栽培では春秋の二季咲き、温室では四季咲きとなるのが特徴。また従来のサクラは、開花のために一定期間低温にさらされる必要があるが、この品種には必要なく、それどころか屋外で冬を過ごすと、元の品種の3倍も花をつけることも判明した。理研では、これがピンクの可憐(かれん)な一重の花を咲かすことから、「仁科乙女」と命名、10年3月から販売を開始する。生物照射チームは、この重イオンビーム照射による突然変異誘発法により、これまでダリアやペチュニアなど15種類の園芸植物で新品種の作出、市販に成功。04年には黄色い花を咲かせるサクラ「仁科蔵王」も作出している。