現実の視野にコンピューターグラフィックス(CG)などの仮想の映像、あるいは文字情報を融合させる手法。現実の情報を増強、もしくは逆に仮想の情報を増強する効果をもつ。バーチャルリアリティー(VR 仮想現実)やAR(拡張現実)の一つとして、人間の五感それぞれを対象にするものであるが、現時点では視覚情報が中心になり、ゴーグル状の映像表示装置であるヘッドマウントディスプレー(HMD ; head mounted display)などを使用する。パソコンなども含めて、構成するシステムや技術をさす場合は、MRシステムやMR技術、複合現実感技術(MRT ; mixed reality technology)などという。2012年6月18日、キヤノンはヘッドマウントディスプレーを使用して、3DのCGを現実の視野に融合させるMRシステムの開発と発売を発表した。この製品は、(1)ヘッドマウントディスプレーに内蔵された左右一対のビデオカメラで撮影した現実の3D映像をコンピューターへ送り、(2)使用者の頭の位置や姿勢などをセンサーで計測したうえで、(3)現実の映像に3D-CGを融合させて表示するものになる。立体感のある実物大のCGを現実世界に融合させて見られるため、工業製品の開発の際には、設計段階でデザインや操作性を確認でき、試作模型を製作する回数も減らすことができる。MRシステムが広く実用化されれば、たとえば機械整備の現場では、機器の構造や作業手順をガイドすることができるし、消防作業の現場では、建物の内部構造を示して消火作業を効率化したり、危険を回避したりすることができる。また、テレビゲームなどのエンターテインメント分野はもちろん、住宅をリフォームする際の検討や外科手術のシミュレーションなど、多岐にわたる応用が期待される。