nm(ナノメートル)、すなわち10億分の1mレベルの粒子状充填剤。金属や炭素系素材などを粉砕機にかけ、プラズマなどを利用して表面の状態を整え、10~数十nmの微細粒子にしたもの。ゴムやプラスチックに混ぜることで、成型品の引っ張り強度や衝撃強度、耐熱性を向上させる役目を担う。たとえば、シワがよりづらい形状安定シャツの構造は、布地の縦糸と横糸とが織りなす目の一つひとつについて、斜めに橋を架けるような化学的処理を施したもので、この架橋構造によって、シワになりづらい靱性を得て、形状安定の効果を成立させる。ナノフィラーは、高温で溶解状態にあるゴムやプラスチックに分散することで、微細な架橋構造を形成し、素材の特性を向上させる。2009年2月17日、NECは、植物を原料とするバイオプラスチックの一つであるポリ乳酸樹脂のもろさを克服する、新しいナノフィラーを開発したと発表した。従来の製造工程で不可欠だった表面処理を行わず、ナノレベルの粒子が自ら凝集する性質を利用して、強固な有機ケイ素化合物を核に、その周囲に柔軟性をもつシリコーンゴム、その外周をポリ乳酸となじみやすい樹脂で覆う3層構造をとらせたものである。3層それぞれの性質により、重量比で5%添加するだけで、ポリ乳酸と強固に結びつきつつ、全体に強靱さを与え、破断までの強度を2倍以上に向上させる。この材料特性の実現により、ポリ乳酸を電子機器などの筐体(きょうたい)として利用することも視野に入った。