原子力発電所から出る使用済み核燃料を、核燃料サイクルで再利用できるように再処理をしないで、そのまま放射性廃棄物として処分すること。核燃料サイクルとは、使用済み核燃料からプルトニウムやウランを取り出し再利用すること。直接処分をする使用済み核燃料や、核燃料サイクルの再処理で出る高レベル放射性廃棄物の処分については、廃棄物が安全な状態になるまで、数万年以上も人類の生活環境から隔離する必要がある。海洋底処分などのアイデアもあるが、地下は数万~数千万年にわたり安定し、地表からの影響も受けにくいことから、数百~1000メートルの地下深くに埋設する地層処分が現実的とされ、フィンランドやスウェーデンでは直接処分のための地下最終処分場の建設計画が進んでいる。日本では、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定されているが、これは再処理等を行ったあとに生まれる放射性廃棄物の処分についてのもの。使用済み核燃料を全量再処理する核燃料サイクル政策が国策として推進されてきたため、直接処分のための技術開発や制度の検討はほとんどされていなかった。しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故後のエネルギー政策見直しで、直接処分実施の可能性が高まり、そのための研究開発が課題として浮上した。使用済み核燃料の地層処分は、再処理後の高レベル放射性廃棄物の地層処分とは異なり、廃棄物に含まれる物質や放射線の出方、処分のための技術も異なる。なお、内閣府原子力委員会の小委員会は2012年4月、使用済み核燃料の直接処分のコストは、将来の電源に占める原子力発電の比率にかかわらず、再処理よりも2~3割安いとの試算を公表した。