放射性物質の分布状況を可視化するカメラで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同開発した。天文衛星用ガンマ線検出器の技術を応用した超広角コンプトンカメラをベースに改良を施し、今までにない感度、画像、視野角を実現したものとなる。2012年11月15日に、プロトタイプ機の「ASTROCAM 7000」と、同年度中に商用機「ASTROCAM 7000HS」を数千万円ほどの価格で市場投入する予定が発表された。超広角コンプトンカメラは、ガンマ線が物質を透過するときに物質の中の電子をはじき飛ばし、そのとき進行角度とエネルギーを変化させるコンプトン散乱(Compton scattering)という現象を利用したものとなる。このとき散乱したガンマ線のエネルギーや、はじき飛ばされた電子のエネルギー、電子とぶつかった場所をもとにガンマ線の飛来方向とエネルギーを計算でき、その「目」の役割を果たすイメージング素子はシリコン(Si)とテルル化カドミウム(CdTe)で構成されている。環境の中で放射性物質が部分的に集積して、高い強度の放射線を出すホットスポットをほぼ180°という広い視野で検出できるうえ、20~30メートルの距離からの測定も可能となる。そのため、サーベイメーターによる放射線測定が難しい高い場所や狭い場所、あるいは一度に広範囲を測定するような場合に威力を発揮する。放射性物質の分布の様子は、実際の風景を撮影した画像の中に重ねて表示し、そのときガンマ線のエネルギー強度を色分けして視覚化することができる。