メタンなどの天然ガスを結晶構造の中に閉じ込めたシリカ鉱物で、1998年にアマチュア研究家の本間千舟氏が千葉県南房総市の山中で発見した。1~5ミリほどの無色透明の鉱物で、一般的なものは、正三角形からなる六面体の上下の頂点を大きく削り取って薄くしたような形をしているが、もともとはそれが8個集まってボール状の多面体の形をとっている。約1800万年前の地層にあたる元採石場で見つかり、千葉県立中央博物館を経て物質・材料研究機構や産業技術総合研究所などが調査した結果、天然ガスハイドレートに類似する構造の新たな鉱物であることが判明。国際鉱物学連合(IMA ; International Mineralogical Association)により「千葉石(ちばせき)」の名と「チバアイト(Chibaite)」の学名が承認され、2011年2月16日に調査結果が発表された。天然ガスハイドレート(NGH ; natural gas hydrate)とは、水の分子、すなわち水素原子と酸素原子がつくる立体的な「かご」の中に天然ガスの分子を閉じ込めたシャーベット状の化合物で、「燃える氷」ことメタンハイドレート(methane hydrate)がよく知られている。千葉石はその水素原子の個所がケイ素原子に置き換わった構造となり、包み込まれる分子はメタンが主体だが、エタンやプロパンなども確認されている。このことから、現場の地層は当初海底下2~3キロにあって、海洋プレートが大陸プレートに沈み込む際に、その一部がはぎ取られてできた付加体(accretionary complex)であり、たい積物に含まれる有機物が地熱で分解されて各種のガスが生成されたと考えられる。メタンを主成分とする鉱物の発見は世界で2例目のことで、また都道府県名が付く鉱物としては、滋賀石、岡山石、新潟石、東京石、大阪石に続く6例目となる。千葉石はエネルギーに活用できるものではなく、天然ガスハイドレートの起源やプレートテクトニクスにともなう各種循環活動など地学的側面の知見に役立てられる。