公開鍵暗号の一種。公開鍵暗号とは、インターネットなどの通信間で情報漏えいを防ぐために利用される暗号方式の1つで、暗号化と復号化に別の鍵を利用するというもの。現在、広く利用されている公開鍵暗号には、桁数の大きい整数の素因数分解が難解であることを利用したRSA暗号がある。近年、コンピューターや通信システムの発達から、より高度な暗号化技術が求められており、次世代の暗号化技術として標準化が進められているのが、ペアリング暗号である。ペアリング暗号は、RSA暗号とは暗号化の処理方法が異なり、ペアリングと呼ばれる数字の組み(pair)を使った数式を利用している。2012年6月、(株)富士通研究所と(独)情報通信研究機構、九州大学は、解読に数十万年は必要と言われていた278桁923ビットのペアリング暗号を、解読方法の改良により、21台のコンピューターで148日間で解読したと発表。923ビットのペアリング暗号の解読成功は世界で初めて。これは世界でトップレベルの「京(けい)」と呼ばれるスーパーコンピューターで解読した場合、約14分間に相当する。暗号化は、スーパーコンピューターで解読に1年かかれば安全性が高いと言われていることから、今回の解読成功により278桁923ビットではぜい弱であることが実証された。また、ここから「京」が解読に1年かかるペアリング暗号は、467桁1551ビットであることも割り出され、今後の安全性予測では、20年後まで安全性が高いと見積もられるのは1011桁3357ビットであることも判明した。