植物の細胞壁を支える繊維構造の最小基本単位で、4ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)ほどの幅をもつ超微細繊維。セルロース分子がまっすぐ鎖状に連なったもので、生物を資源活用するバイオマスとしては、植物資源の50%以上を占める。セルロースナノファイバーなどとも呼ばれるが、生物学上はセルロースミクロフィブリル(cellulose microfibril)という。主に植物由来の繊維を機械的に解きほぐして得るため、そうした工程で生産したものは特にミクロフィブリル化セルロース(MFC : microfibrillated cellulose)と呼んで区別することもある。非常に軽量でありながら鋼鉄の5倍の強度をもち、熱膨張率はガラスの10分の1以下であることなど優れた材料特性をもつうえ、無尽蔵に近い資源量や生分解性をもつなどメリットは多い。半面、生産にコストがかかるほか、凝集性が強く、取り扱いが難しいなど問題もあり、工業利用には至っていない。研究の第一人者である京都大学の矢野浩之教授は、パルプ精製に用いるリファイナーという装置でパルプの外層に傷を付け、吸水させたのちに練り込むような方法や、バクテリアが産出するBNFの束でできているナタデココを活用するなど、多方面からBNF生産の技術開発に取り組み、1キロ当たり400円程度という大幅なコストダウンにもめどを付けている。同教授は、パルプから得たBNFのシートに樹脂を含ませて多層化する高強度軽量素材や、ナタデココを圧縮・乾燥させたシートをもとに有機ELの透明基板にも使える透明フィルムなども開発している。2010年12月7日、住友ゴム工業は、ゴムの高分子がBNFと絡み合うことで、従来のカーボン補強と比べて1.8倍近い剛性を示し、タイヤの軽量化や転がり抵抗の低減につながる特性をもつことを国際学会で紹介したことと、今後BNFをタイヤ製品に活用していく方針を発表。BNFを工業製品へ本格的に導入する端緒を開くことになる。