動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸の一種で、特有の腐敗臭を発する油状の液体。ブタン酸ともいい、バターの中から得られたことで命名された。自然界では子牛、羊、ヤギなどの乳脂中にごく少量含まれている。また、動物の腸などにすむ酪酸菌(clostridium butyricum)という微生物が、糖や乳酸を発酵させる過程でも生成する。工業的に作られた酪酸は、香料の合成原料や、皮革製造に利用される。性質は、中程度の強酸であり、水やエタノールと自由に混じり合う。多くの金属を浸食し、人体はもちろん、水生生物にも毒性をもつ。とくに皮膚、目や気道の粘膜に対して腐食性がある。そのため、国際化学物質安全性計画(IPCS)が作成する国際化学物質安全性カード(ICSC)には、あらゆる接触を避け、皮膚や目に触れたり、吸入、経口摂取した場合は医師に相談すること、と注意事項が明記されている。さらに「漏洩物処理」項目に、この物質を環境中に放出してはならない、とも表示している(ICSC番号1334)。