農業生物資源研究所とプライムテック株式会社および理化学研究所の研究グループが、遺伝子組み換え技術などを用いて開発した、重要な免疫機能を持たないブタのこと。これまでに開発されている免疫不全の実験動物はマウスなどの小動物のみで、大型動物のブタでは世界初の成功例となる。研究グループはまず遺伝子組み換え技術で、免疫機能に重要な役割を持つIL2rg遺伝子を除いたブタの体細胞を作成した。次いで体細胞クローン技術によって遺伝的に同じブタを40頭誕生させたところ、その内の14頭が、免疫に必須な器官である胸腺や一部のリンパ球を持たないブタとなった。さらに、免疫不全の実験動物は感染症などにかかりやすいため短命とされていたが、今回の免疫不全ブタの開発に際しては、正常な免疫機能を持つブタの骨髄を5頭に移植したところ3頭が移植後に1年以上生き続けた。研究グループは今後、免疫に関する他の遺伝子をさらに取り除いた、複合型の免疫不全ブタの開発を目指す。免疫機能のない動物は拒絶反応を起こさないため、ヒトの細胞を移植することも可能。免疫不全ブタは、新薬の開発、実用的なヒト組織や臓器の再生の研究を助けるものとして期待される。