海牛目マナティー科に属する水生哺乳動物の総称。フロリダ半島、カリブ海、南アメリカ北東部沿岸と河口や河川に生息するアメリカマナティー、アフリカ西部の沿岸や内陸の河川に生息するアフリカマナティー、アマゾン川とその流域にのみ生息するアマゾンマナティーの3種がいる。人魚伝説のモデルとされるジュゴンは同じ海牛目に属する近縁種。アメリカマナティーとアフリカマナティーは、体長約3~4メートル、体重約500キロの大形種、アマゾンマナティーは体長約2.5~3メートル、体重350~500キロで小形種である。体は水中生活に適した平たい紡錘(ぼうすい)形で、一生を水の中で過ごす。前足は胸びれになっており、後ろ足の代わりに丸くて平べったい尾びれをもつ。ゾウと共通の祖先から派生した草食獣で、マングローブの葉や海藻、水草などを食べる。夜行性で性質はおだやか。基本的に単独で生活するが、ときに10頭以上の群れで行動することもある。食用や皮目的の乱獲で生息数が減少し、ワシントン条約や各国の法律によって保護されているが、モーターボートとの衝突や漁網に引っかかる事故なども多く、絶滅が危惧されている。生息環境の悪化も追い打ちをかけ、フロリダ沖では赤潮の影響により、2013年1月から3月上旬までのわずか2カ月半で過去最悪ペースの174頭が死んだと報告された。