超高層ビルを昇るように、そのまま宇宙空間と地上間を上昇・下降ができるエレベーター。軌道エレベーターとか、同期エレベーターともいう。かつてはサイエンス・フィクションの世界に登場する夢の交通手段であったが、ナノテクノロジー素材の開発によって、実現の可能性を帯び始めている。地上3万6000kmの地球を回る軌道上の静止衛星から、地球の引力を利用してカーボンナノチューブ製のケーブルを地上まで垂らす。静止衛星の外側(地球と反対側)にも、遠心力の働きを利用してケーブルを伸張することで、引力と遠心力とでバランスが保たれ、ケーブルは静止衛星と同様に宙づりの状態となる。静止衛星を挟んで、長さ5~10万kmにも達するこのケーブルを利用して、地上と軌道上をエレベーターで行き来する仕組みとなっている。この原理は、SF作家のアーサー・C・クラークが「楽園の泉」という作品の中で紹介したものだが、ケーブルを支えるには鋼鉄の180倍以上の強度の素材が不可欠なため、実現は不可能と見られていたが、カーボン・ナノチューブを使うことで可能性が開かれている。宇宙エレベーターを使えば、地球の重力を脱するための莫大なエネルギーが不要となるので、宇宙への往復のコストは100分の1以下に抑えられると見積もられ、アメリカではすでに1兆円の建設費を見込んだ計画もある。日本でも宇宙エレベーターが建設されたら、どのように利用するかのアイデアを募集するコンテストの企画のほか、2008年11月には、研究者を招いて第1回「宇宙エレベーター会議」の開催も予定されている。