大マゼラン雲のタランチュラ星雲(Tarantula nebula)で発見された観測史上最も重い恒星で、太陽の約265倍もの質量をもつ。イギリスのシェフィールド大学などの研究チームが、チリのヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT Very Large Telescope)を使い、銀河系から約16万5000光年(1光年は約9兆4605億km)離れたタランチュラ星雲の中の、若い大質量星が密集する星団の中で発見。イギリスの王立天文協会(The Royal Astronomical Society)のホームページにて2010年7月21日付で発表された。太陽と比べて、数十倍の径をもち、1000万倍明るく、7倍近い表面温度をもつという。定説では、恒星が安定して存在できる質量限界は太陽の150倍前後とされてきたが、R136a1はその倍に近く、それゆえの特異な性質もみせており、新たな理論構築に貢献するとみられる。この巨大な質量も、誕生当初は太陽の約320倍あったと考えられ、その強い重力も手伝って異常な速さで水素の核融合反応を進めているため、誕生からわずか約100万年の間に、太陽50個分以上の質量を減らしている。太陽は誕生時から約50億年を経ており、残りの寿命も約50億年とされている点と比べても、すでに「中年期」にいたるこの質量減少の速さは非常に珍しい。また、巨大な恒星が寿命を終える際に大爆発を起こし、ときにその核が中性子星やブラックホールとなる「超新星(supernova)」とは異なり、太陽の140~150倍以上の質量をもつ恒星の場合、自身を完全に吹き飛ばして残骸を残さない「対不安定型超新星爆発(pair-instability supernova)」という特異現象を起こすと考えられており、100万年単位の未来において、R136a1がその証拠となる可能性もありえる。