カタアリ亜科アルゼンチンアリ属に分類される南米原産のアリ。学名はLinepithema humile。体長約2.5ミリ(女王アリはその2~4倍)の小型種で、淡い黒褐色の細長い体と長い触覚をもつ。動きが素早く、冬でもよく活動するのが特徴。交易など人や物資の移動に伴って生息地域を広げ、世界中に分布している。普通、1つの巣に女王アリは1匹だが、アルゼンチンアリの場合、複数の女王アリがおり、いくつもの集団(コロニー)が1つの巣で生活するため、繁殖力も高くなる。ほかのアリと異なり、地中深く巣を作ることはまれで、わずかなすき間から屋内にも侵入し、食べ物にたかったり人をかんだりするので、不快害虫としての被害も訴えられている。また、アブラムシなどが分泌する甘露をアルゼンチンアリが好むため、これらの農業害虫を外敵から保護し、結果として農作物被害を助長している。毒性はないが、攻撃性や繁殖力が非常に高く、在来種のアリを駆逐して生態系に悪影響を及ぼすため、世界各地で問題となっており、国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」や日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。日本では、1993年、広島県廿日市市で初めて確認されて以来、兵庫、山口、愛知、岐阜、大阪、京都、徳島など西日本を中心に生息範囲を広げ、2007年には神奈川県横浜市で、10年10月には東京都内でも確認された。港近くで見つかることが多く、海外からの貨物などにまぎれて侵入しているとみられる。05年6月に施行された特定外来生物被害防止法で、特定外来生物に指定された。