宇宙空間を飛び交う放射線を宇宙線という。相対論に基づく理論上、宇宙線はそのエネルギーが高いほど、ビッグバンの名残の電磁波である宇宙背景放射とぶつかりあうため、当初どれほどのエネルギーをもっていようとも、1.5億光年ほど飛行するうちに、必ず4×1019eV(電子ボルト)以下のエネルギーになるとされる(1光年は約9兆5000万km)。この限界値は、理論提唱者3人の頭文字をとってGZK限界(GZKカットオフ)と呼ばれているが、これを超える宇宙線が存在するとの説があり、それをスーパー宇宙線、あるいはスーパーGZK宇宙線、超高エネルギー宇宙線などと呼ぶ。宇宙線は地球上に降り注ぐ際に、大気の成分と反応しながら、エアシャワー(空気シャワー)という無数の粒子のシャワーを生成し、その様子を観測することでエネルギーを計算できる。東京大学宇宙線研究所などのグループは、山梨県明野の広域空気シャワー観測装置「AGASA」を使い、1990年から宇宙線の観測を続け、13年の間に、GZK限界を超える1020eV以上のエネルギーをもつ宇宙線を11例観測。地球の周囲1.5億光年の範囲内に、これほど高いエネルギーの宇宙線を発生させる天体現象は確認されていないため、スーパー宇宙線の存在が示唆された。しかし、同様の実験を行ったアメリカのユタ大学のグループは観測しておらず、その存在を否定。そこで、両者が中心となり、「AGASA」の約9倍の感度を目指して、ユタ州の標高1400mの高地に約500台の粒子検出器を1.2km間隔で碁盤状に並べた「TA(テレスコープアレイ)」を設置。2008年8月25日、共同観測を開始した。スーパー宇宙線の存在は、きわめて高いエネルギー領域の世界において、相対論に「破れ」が生じることを意味する。