静止軌道上の人工衛星で太陽光発電を行い、そのエネルギーをマイクロ波やレーザーに変換して地上や海上の受信施設へ照射し、再び電気に変換するシステム。ソーラーパネルを搭載した発電衛星のほか、巨大な反射鏡システムを併用すれば、地球の影に入る際にも太陽光を反射中継させ、つねに光を確保できる。レーザーに変換するタイプでは、反射鏡で集めた太陽光から熱だけを逃がしつつ、直接レーザー発振ユニットに導くというシンプルな構造も考えられている。宇宙太陽光利用システムなどとも呼ばれるが、もともとは1968年にアメリカのピーター・グレイザー博士が発案した「宇宙太陽光発電所(SPS ; Solar Power Station)」が発端。日本では、昨今の宇宙開発技術の進展を背景に、逼迫(ひっぱく)するエネルギー問題に対する一解決手段として早くから研究が進んでおり、世界的にもリードしている。静止軌道(geosynchronous orbit)とは、赤道上の高度約3万6000キロにあたる円軌道のことで、地球の自転と同じ周期をもつために、この軌道に載せた人工衛星は、地上から見上げたときに、いつでもその位置で静止しているように見える。宇宙空間で太陽光発電を行う場合、地上と比べて、大気による光の減衰がない分、約2倍の光量となるうえ、反射鏡を使えば日照時間も4~5倍に相当するため、実質8~10倍の発電量をほぼ24時間にわたり安定して得られることになり、さらに天候や季節の条件に左右されることもない。2011年1月22日には、三菱電機や京都大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが、宇宙空間を模した環境下でマイクロ波を伝送する実証実験を同年春から開始する予定であると、一部新聞で報じられた。三菱電機では、約200メートルの楕円形ソーラーパネルをもつ小型衛星を約40基編隊飛行させ、通常の発電用原子炉1基分に相当する100万キロワット級の電力を得ようという「ソーラーバード(SOLARBIRD)」計画を構想している。