アメリカのエネルギー省核安全保障局(NNSA)が保有する、世界で最も強力なX線発生装置。ニューメキシコ州アルバカーキのサンディア国立研究所にあり、X線照射によって地球の内核よりも高い圧力や超高温状態をつくり出す能力をもつ。イオンビーム装置PBFA-Iを前身とし、1995年に2度目の改造でPBFA-Zとなって以後、Zマシンの名で呼ばれるようになった。2007年には大規模な改良が行われている。NNSAは、10年11月と11年3月の2度にわたり、ZマシンのX線照射による未臨界核実験に成功したと発表。未臨界核実験(臨界前核実験ともいう)は、核爆発を起こさずに核兵器の信頼性を調べる実験で、通常は高性能火薬を爆発させた衝撃波でプルトニウムを圧縮し、連鎖反応を起こす臨界状態(核爆発)に至る直前の状態で、プルトニウムが劣化していないかなどを調べる。アメリカは、核兵器の安全性と信頼性の維持を理由に、ネバダ州の地下核実験場で未臨界核実験を繰り返している。これに対しZマシンによる未臨界核実験は、小さな容器に閉じ込めたプルトニウムにエックス線を照射し、核爆発に近い高圧、高温状態でプルトニウムの反応を調べた。NNSAはこの実験成功について、地下核実験を行わずに保有核兵器の安全性や有効性を調べられることを意味するとしている。