名古屋大学の伊丹健一郎教授らが合成した、炭素原子120個と水素原子78個からなる「かご状」の炭素ナノ分子で、2012年8月27日に発表された。120個の炭素原子は、6個ずつ集まって環(わ)を作り、それらが20個つながって、大相撲の力士が締める「まわし」のような3本のアーチをもつ骨格を形成。そして、この環と環をつなぐ以外の炭素原子には、水素原子が1個ずつ結合している。炭素原子6個が環を作り、その一つひとつに水素原子が1個ずつ結合したものをベンゼン(benzene)というため、カーボンナノケージは20個のベンゼンから成り立っているともいえる。大きさは50万分の1ミリほどしかなく、白色で有機溶媒によく溶け、300℃以上でも分解しないうえ、光を効果的に吸収するほか、強い青色蛍光を放つなど、さまざまな特性をもつ。これらを生かし、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)材料や有機トランジスタ材料などの有機エレクトロニクス分野をはじめ、光記録材料などの光機能材料分野、生体分子の蛍光イメージングなどのバイオイメージング分野への応用展開が考えられている。また、カーボンナノチューブが三叉(さんさ)で接合する分岐型カーボンナノチューブ(branched carbon nanotube)の接合ユニットの役割も果たす。同教授らは、09年にも、ベンゼンをリング状につないだ、カーボンナノリング(carbon nanoring)を合成しており、狙った直径で作り分けることにも成功し、世界をリードしている。