水素や鉄など、固有の性質ごとに分類した原子を元素といい、その特性は原子核の構成、すなわち陽子と中性子の組み合わせに基づく。この構成が変わることを核変換といい、放射性廃棄物をより半減期の短い物質に変える試みもなされている。おもに中性子を撃ちこむ方法があるが、中には中性子の吸収を起こしづらい元素もあり、原子炉で生じる放射性のヨウ素129(陽子と中性子の総数が129)などは1600万年という半減期でもあるために、有効な処分方法がない。2007年1月上旬、レーザー技術総合研究所と兵庫県立大学は、加速器でつくる高強度でピンポイント照射が可能なγ線ビームによって原子核を振動させ、中性子を弾き出す方法で、世界で初めてヨウ素の核変換に成功したと報じた。実験に用いたのは天然のヨウ素127だが、ヨウ素129と核の性質が同等のため、実際にこのビームをヨウ素129に照射すれば、約30分で安全なキセノン128に核変換することがわかっている。