重油や灯油などの化石燃料に、水を混ぜた燃料。水と油はそのままでは混ざらないため、わずかな添加剤を使用し、マヨネーズのように、水の粒子を油が包んだ「エマルジョン」とよばれる状態にする。貴重な化石燃料を文字通り「水増し」するメリットはもとより、沸点の低い水粒子が、燃料が燃えるより先に一気に気化する「ミクロ爆発」を起こすため、燃料を細かく拡散させて燃焼効率を上げる。つまり、完全燃焼に近づくため、化石燃料そのものを燃焼させるよりも、環境汚染物質「粒子状物質(PM)」や「硫黄酸化物(SOx)」の発生量を低減できる。さらに、水粒子がエンジン内部の温度を均一に下げ、過度に高温となる個所が生じないため、高温下で窒素と酸素が結びつく「窒素酸化物(NOx)」の発生も低減できる。時間がたつと、燃料と水が分離してしまうなど、まだ課題のある技術であり、燃料の種類や水との混合比、また添加剤の種類や混合比などについて、模索が続いている。2007年12月下旬には、西田修身神戸大学名誉教授らのチームが、従来の界面活性剤ではなく、無機質成分の添加剤を使う技術を開発したと報じられた。燃料と水の分離を長期間抑え、水を50~60%混合させることもできそうだという。実証実験では、船舶燃料などに使われるC重油に水を20%加えたエマルジョン燃料で、トラクター用のエンジンを約2時間駆動させた。燃料の消費量は5~10%少なく、NOxの排出量は約30%少なかった。