宇宙飛行士が、宇宙空間で生命維持を果たすために着用する防護服。一般的には、スペースシャトルや宇宙ステーションの外に出る際に着用する「船外活動ユニット(EMU extravehicular mobility unit)」をさす。宇宙空間は真空で気圧がなく、温度に関しても、国際宇宙ステーションが周回する低軌道では、-55℃~+125℃の範囲で極端に変化するうえ、スペース・デブリや微小隕石も飛び交う。当然、人間はこの条件に適応することができず、特に液体の沸点は圧力の上下に従うため、全身の大部分を占める水が瞬時に沸騰してしまうことになる。そこで、強固なシェル構造で全身を覆う圧力容器となる「宇宙服アセンブリ(SSA space suit assembly)」で全身を覆い、内部の気圧や温度、呼吸条件を確保しつつ、体調の監視や通信機能をもつバックパック「生命維持システム(LSS life support system)」を背部に装着することによって宇宙服を構成する。宇宙服アセンブリは、(1)合成繊維や樹脂などによる2層の気密維持層を中心に、(2)その内側には、密閉状態のもとで次第に上昇していく内部温度を水の循環で調整する3層の冷却下着を配し、(3)外側には、高温や低温、微小隕石の衝突に対処するべく、複数の強化繊維による9層の保護層を設け、(4)ヘルメットのバイザーには、過剰な太陽光や有害な電磁波を緩和する目的で、金のコーティングを施す。これらは各部位ごとにパーツ化され、ヘルメット、胴体の上・下部、腕部、グローブで分割できるので、体型に合わせて換装が可能となる。また、長時間におよぶ船外活動に際しては、飲料水の確保のためのパックを首元にセットし、一方でトイレにも行けないため、大人用の紙おむつが使われる。現在の宇宙服は、約120kgになるほど大がかりで、着用に難儀するうえ、可動の制約が厳しく、動きづらい。さらに、放射線に対しても、14層もの多層生地のせいで副次的に防いでいるにすぎず、改善すべき点もある。