高い電圧を加えられることによって、生育が活性化されたキノコ。岩手大学工学部の高木浩一准教授らと岩手県洋野町の長根商店、盛岡市外山森林公園を管理する盛岡市森林組合などにより、共同研究が進められている。「雷の多い年はキノコが豊作」や「雷の落ちた場所にはキノコがよく生える」という昔からの言い伝えに基づき、キノコの菌糸を植えつけたホダ木や赤松の根元に、瞬間的に高電圧をかけて雷の効果を再現したところ、有意な結果が得られ、同森林公園で実験が行われている。少しずつ蓄えた電荷を一気に放出するコンデンサー(蓄電器)を4台並べた専用の装置を用意して、たとえばシイタケの菌を植えたホダ木に約5万~10万V(ボルト)の電圧をかけたところ、収穫率が最大で2.2倍にもなったという。同様の方法により、ナメコは1.8倍、クリタケで1.6倍、ハタケシメジで1.3倍の収穫量となったが、マイタケは死滅してしまったという。これらの効果について詳細なメカニズムは解明されていないものの、高電圧をかけると細胞の働きが変わることは知られており、高電圧に危機感を抱いて子孫繁栄の本能が刺激されるという仮説が立てられている。この技術はキノコにとどまらず、他の植物についても有効な可能性がある一方で、マイタケの例のように効果がマイナスに現れることもある。特に、がん細胞は高い電圧を受けると自らの細胞を消失させるアポトーシスの状態にいたることがわかっており、同准教授はこの原理を解明して、がん治療に生かすことを最終目標にしているという。