2006~10年度新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略先端ロボット要素技術開発プロジェクトで、国際レスキューシステム研究機構(IRS)、千葉工業大学、東北大学、情報通信研究機構(NICT)、産業技術総合研究所(AIST)が約2億円をかけて共同開発した無人の災害対応支援ロボット。10年4月に報道陣に公開された。11年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故に際しては、4月に1、3号機の原子炉建屋の内部調査を実施したアメリカのアイロボット社製パックボットに続き、5月から福島第一原発に投入されることになり、注目を集めた。クインスは、化学、生物、放射性物質、核、爆発物による災害、たとえば化学プラントの事故、地下鉄サリン事件のようなテロなど、危険物質が漏えいしている閉鎖空間で人に代わって現場の情報を収集し、状況調査を行う目的で開発された。サイズは全長66センチ、全幅48センチ、車高22センチ、重量約26キロ。戦車のようなベルト状のメインクローラー(無限軌道)で走行し、両側面の前後に装備された計四つの小型のサブクローラーを動かして障害物を乗り越えたり階段を乗降する。落下しても機能を持続できる耐久性を備え、スプリンクラーの散水に耐える防じん・防水性能をもち、約20センチの浅い水たまりを越える能力があり、開発者発表では、アメリカ災害対応訓練所でのテストで世界一のがれき走破性能を示した。標準でカメラやマイク、スピーカー、PSD(光位置)センサーを搭載し、オプションとしてズームカメラやマニピュレーター、赤外線サーモグラフィー、CO2センサー、3Dレーザーレンジファインダーなどを装備できる。操縦は遠隔操作で、パソコン画面を見ながらコントローラーで無線操縦する。福島第一原発の事故では、無線操作距離の延長や有線操作モデルの製作など、放射線量測定、建屋内状況の調査作業や軽作業を想定した改造が実施された。