2011年末から12年春にかけて中東で「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が広がるなか、反体制派に対するアサド政権の苛烈(かれつ)な弾圧が続くシリアに派遣される、国連の停戦監視団のこと。12年4月21日の国連安全保障理事会(安保理)で、決議2043によって設立された国連平和維持活動(PKO)で、団長はノルウェー軍のムード少将。最大300人の非武装の監視要員を、当面3カ月間、シリア国内約10カ所に派遣する。シリアでは11年3月18日に数千人規模の反政府デモが発生して以来、全国各地にデモが拡大するとともに、父から政権を継承したアサド政権による弾圧もエスカレートした。シリアの人権団体によれば、1年間で民間人や反体制派、兵士ら計9113人が死亡したとされ、アメリカや欧州連合(EU)などが、たびたび警告や制裁を発動したが、事態は収拾できなかった。懸念を強めた国際社会の総意を受けて、国連とアラブ連合の合同特使となったコフィ・アナン前国連事務総長が、人口密集地での部隊展開や重火器の使用中止、食料など人道支援物資運搬のための毎日2時間の休戦など、6項目の調停案を提示。アサド政権はこれを受け入れて12年4月12日を停戦期限とした。UNSMISの先遣隊は同月15日にシリアに派遣され、活動を開始したが、中部の都市ハマやホムスなどで、先遣隊が去った後に政権側が激しい砲撃を行い、また、隊員と話をした反体制派住民らが数十人規模で殺害された。国連は1カ月以内に本隊30人を派遣するとしたが、シリア政府が反体制派弾圧を非難する国の出身者の入国査証(ビザ)を認めないため、要員が半数ほどしか確保できていない。5月2日、国連PKO局は、日本を含む約110カ国に派遣要請を行った。