装着・携帯できる小型の機器を使い、人体を信号の伝送経路として、他者あるいは施設の機器と通信をすること。体脂肪計で用いるのと同等な低い電流を信号にして人体に流し、データのやりとりをする方法が、すでに実用化している。一方、別のアプローチもある。「送信側の機器」が人体と接する個所、つまり電極に電圧をかけて、プラスに荷電させると、ここに電界が生じ、この電極と接する人体の表面にはマイナスの電荷が集まる。そのため、対となる「受信側の機器」との接点には、反作用としてプラスの電荷が集まり、その電界の作用で電極にはマイナスの電荷が生じる。つまり、送信側の電圧を操作して電界に強弱をつければ、信号として扱えるようになり、1秒当たり10Mbit(メガビット)のデータ転送も実現するという。電流を流すわけではないので、刺激を感じることもなく、電界という空間的に及ぶ作用を利用するため、電極と人体が接している必要もない。2008年2月12日、NTTは、この方式では世界初となる実用化製品を同年4月に発売すると発表。ICカードをポケットに入れておくと、ドアノブを触れるだけで、入退室管理のセキュリティー認証が可能になるというもの。人体通信はどちらの方法であっても、携帯電話やICカードへの導入が想定され、握手だけでお互いの情報交換ができたり、鉄道の改札でICカードをかざさずに精算を済ませたりすることが可能となる。07年の家電見本市では、コードレスヘッドホンに音声信号を伝達するデモンストレーションも行われた。