原索動物門の一つで、ナメクジウオ綱ナメクジウオ目ナメクジウオ科ナメクジウオ属に分類される生物。原索動物とは、一定期間もしくは死ぬまで、脊椎(せきつい)を持たず脊索(せきさく)を持つ動物のことで、頭索類のナメクジウオと尾索類のホヤとに分けられる。目や骨や、脳、心臓もなく、熱帯や温帯域で30種類ほど確認されており、日本近海でも、有明海や瀬戸内海の浅瀬の砂の中に3種類ほどが生息している。ナメクジウオは、脊椎動物への進化過程の痕跡を色濃く残しているともいわれており、長く研究対象となっていた。京都大学、理化学研究所、国立遺伝学研究所やアメリカの連合ゲノム研究所など、5カ国18機関による共同研究によるゲノム解読の結果、人類などの脊椎動物の起源がナメクジウオであることが突き止められ、イギリスの科学誌「Nature(ネイチャー)」の2008年6月19日号に掲載された。研究は、ゲノム解読の対象となったフロリダナメクジウオ(Branchiostoma floridae)のおよそ5億塩基対の配列を決定し、2万1600個の遺伝子を見つけてこれを分析した結果、ヒトゲノムの約6分の1の大きさのナメクジウオの遺伝子が、ヒト遺伝子の組成ときわめて類似していることが明らかになった。これにより、ダーウィンの進化論の発表以来の懸案となっていた、脊索動物の進化と脊椎動物の起源を明らかにする研究が、大きく進むことが期待されている。