フルモックス炉と読む。原子力発電などでウラン燃料を燃やすと、その「灰」である使用済み燃料の中にはプルトニウムが生成される。プルトニウムは原子爆弾の材料になるため、核拡散防止上の厳重な管理が要求されるが、原子力の副産物として蓄積していくことは避けられない。そこで、従来のウラン燃料、つまり二酸化ウランにこのプルトニウムを混ぜたMOX燃料(mixed oxide fuel)を作り、たまり続けるプルトニウムをもう一度原子力発電に利用しようとする考えがある。しかしながら、一般的な発電用原子炉は、ウラン燃料での稼働を前提にしているため、性質が異なるMOX燃料を全体の3分の1程度しか装填できない。そこで、MOX燃料のみをフルに装填できる改良型の沸騰水型炉が提案され、これをフルMOX炉と呼んでいる。2008年4月23日、経済産業省は、電源開発株式会社が青森県の大間町で建設計画を進めている、世界初の商業用フルMOX炉「大間原子力発電所(大間原発)」の設置を許可。敷地には原子炉から250mしか離れていない私有地や民家もあるうえ、最上級品として名高い「大間のマグロ」を擁する有数の漁場への「放射能を含む高温の排水」がなされるなど、懸念の声も多い。しかし、「対策を講じることによって問題は低減できる」などとの回答のもと、12年3月の運転開始を目指し、計画の進行が決定した。一方、MOX燃料の製造には、通常のウラン燃料の5~20倍のコストがかかるという。