NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査機。2002年に存在が確実視された水や氷の確認、また大気の組成や鉱物などの調査、生命の痕跡の探索などを目的としている。製造途中の01年に先行プロジェクトの失敗でお蔵入りの憂き目にあったが、新たなプロジェクトのもと復活、「不死鳥」の名が与えられた。直径約1.5mの本体に、気象観測装置や原子間力顕微鏡、質量分析器などの高度な分析機器、そして地中の氷や鉱物を掘り出すロボットアームなどを搭載し、本体両側に電源のためのソーラーパネルを展開する。本体の片隅には、カール・セーガンなど著名人からのメッセージや火星を題材にした芸術作品、世界各国から寄せられた約25万人の個人名などを収録したDVD「Messages from Earth」が張りつけられ、これも話題となった。07年8月4日、フロリダ州のケープ・カナベラル空軍ステーションからデルタIIロケットで打ち上げられ、火星までの6億7900万kmを約10カ月かけて飛行。本体は、二枚貝さながらの形をした耐熱シートとバックシェルの中に納められ、08年5月25日に「氷が存在する」北極付近に投下。時速2万kmで大気圏に突入したのち、パラシュートや推進装置による逆噴射で減速、アメリカ東部夏時間19時36分(日本時間26日、8時36分)、軟着陸に成功した。地球との通信は「マーズ・リコナイサンス・オービター」などの火星周回探査機を介して行われ、探査期間は3カ月を予定しているが、太陽光が届かなくなる冬季までは活動可能という。