惑星系に属さず、決まった軌道ももたずに宇宙空間を漂う惑星。通常、惑星は太陽のような恒星を中心にして、その引力を受けながら周囲を回っているもので、「太陽系」などというように、ある恒星がつくる惑星系に属している。しかし、他の惑星との重力的な相互作用のせいで弾き飛ばされ、引力にとらえられることなく漂っている惑星も存在するのではないかと予想され、観測が進められてきた。そうしたなか、大阪大学や名古屋大学、ニュージーランドのオークランド大学などによる共同研究グループのMOA(Microlensing Observation in Astrophysics)は、こうした浮遊惑星を銀河系内で10個発見し、2011年5月19日に発表した。観測方法は、重力によって光が曲げられる重力マイクロレンズ現象(gravitational microlensing 重力レンズともいう)と呼ばれる現象を利用したもので、たとえば明るい惑星Aの前を別の惑星Bが横切るとき、Bがもつ重力によってAの光がレンズを使ったように曲げられて収束し、突然明るくなることがある。このとき、Bがふつうの惑星系に属した惑星であるならば、その明るさは20日間ほど続くことになるが、軌道をもたずに漂う浮遊惑星の場合だと、明るさは1~2日間ほどしか続かない。ふつうの惑星が起こす重力レンズは、100万個の惑星を観測してようやく一つ見つけられる程度のものであるため、1~2日ほどしか続かない浮遊惑星の重力レンズを観測しようとすると、毎晩10回以上、数千万個の星を観測し続けなければならず、発見はきわめて難しいものだった。グループはこの課題に対し、05年に、ニュージーランドのマウント・ジョン天文台(Mt. John observatory)に1.8メートルの広視野望遠鏡MOA-2(“2”はローマ数字の“II”)を建設。翌年から銀河系の中心の膨らみにあるおよそ5000万の惑星を毎晩10~50回観測し続け、1年あたりにおよそ500の重力レンズを検出した。06~07年までの観測データを解析した結果、明るさが2日以下しか続かない浮遊惑星特有の重力レンズを10例確認し、その現象が続いた時間から考えて、それらはどれも木星とおなじぐらいの質量をもつこともわかった。地球のような小さな惑星であればもっと弾き飛ばされやすいはずで、そうしたものまで含めれば、浮遊惑星は一つの惑星系に属する惑星の数と同じぐらいか、恒星のおよそ1~2倍ほどは存在していることが予想されるという。