主にアメリカ中・東部にて、13年と17年という素数の年周期を正確に守り、数億~数十億匹のレベルで大量発生するセミの通称。周期ゼミ(periodical cicadas)ともいい、昆虫綱半翅(はんし)目・同翅亜目セミ科マギキカダ属にて「13年ゼミ(13-year periodical cicadas)」と「17年ゼミ(17-year periodical cicadas)」に分類される。素数とは、「自ら」と「1」以外の数で割ることができない自然数のことで、2,3,5,7,11,13,17,19,23,…と延々続いていく。この13年と17年という不可思議な周期に対して、静岡大学の吉村仁教授らは、10~20年までの周期をもつ11種類のセミが存在すると仮定し、捕食者などの厳密な条件も含めてシミュレーションを実行。個体が集合するほど繁殖や生存に有利になるというアリー効果(Allee effect)に基づいて、13年と17年の周期が生存や繁殖に有意に働くことを示し、2009年5月18日付の『アメリカ科学アカデミー紀要』にて発表した。セミには鳥やカマキリなどの天敵に対する対抗手段がほとんどなく、一方的に捕食されるに等しい。そのため、毎年それなりの数の子孫が羽化するようであると、食べ尽くされ、絶滅の危機に瀕してしまう可能性がある。しかし、十数年に一度の周期でけた違いに大量発生するのであれば、天敵から食べ尽くされることはなく、確実に子孫を残せるようになる。13と17という数字については、同属である13年ゼミと17年ゼミが同時に羽化した際に起こり得る交雑を、可能な限り避ける意味をもつ。交雑によって、14年ゼミと16年ゼミが同時に誕生したとすると、本来13年周期と17年周期が同期するのは221年に1回の割合になるところ、本来の半分ほどとなる112年後に同時に羽化することになる。分化したことで数も減るうえ、さらなる交雑種も誕生し、羽化の同期が次第に増えていくこととなり、生存の優位性がなくなってしまう。こうしたリスクを回避するため、また十数年という、ただでさえ昆虫としては異例なほどの長い寿命から考えても、現実的に13年と17年の周期が適していることが確認された。