日東電工株式会社(本社・大阪市)が、大阪大学大学院の中山喜萬研究室と共同開発した生態模倣粘着剤。垂直な壁を自由にはったり、足の指1本で天井からぶら下がったりすることで知られるヤモリの足の裏には、微細な毛が大量に生えており、毛の先端と壁面の凹凸が分子レベルで吸い付くことによって、強力なせん断接着力を生んでいる。せん断接着力とは、張り合わせた二つの平面に平行な逆向きの力を加えることで、面と面の間に生まれる接着力のこと。2000年にヤモリの足の裏のメカニズムが判明して以降、この構造を応用した粘着剤の開発が世界中で進められてきたが、自然界のヤモリと同じ接着力は再現できていなかった。10年1月に日東電工が発表したヤモリテープは、単層の炭素を直径0.4~100nm(1nm[ナノメートル]は100万分の1mm)の円筒状に巻いたカーボンナノチューブ(CNT)を利用したもので、テープ1平方cm当たり約100億本のCNTを張り付けた。押し付ける力に比例してせん断粘着力を増すヤモリの足の裏と同じ傾向を、ヤモリテープでも確認できたという。5cm四方のテープで115kgの重量をぶら下げることができるほか、接着面を汚さずに簡単にはがすことができ、どのような表面にも張ることができる。日東電工では、新たな用途を持った粘着テープの開発につなげるとしている。