有人火星探査ミッションを想定して、ロシア生物医学問題研究所(IMBP)が2010年6月3日から行う長期閉鎖実験のこと。シミュレーションは三段階で行われ、最初の250日間は地球から火星までの飛行期間、次の30日間は火星における滞在期間、さらに残りの240日を地球帰還への期間として、合計520日間を予定している。モスクワの研究施設内に宇宙船を模した約180平方mの閉鎖施設を設置し、地球と火星との通信のタイムラグを設け、無重力と放射線を除いては、有人火星探査ミッションと同等の環境下が設定される。被験者らは共同生活を送り、長期隔離が免疫や精神状態などにもたらす影響が調べられる。IMBPは10年5月に、マーズ500のための7人(ロシア人4、フランス人・イタリア人・中国人各1)を発表し、このうち6人が正式クルーとなり、1人がバックアップ要員となる。IMBPによれば、クルーには、300万ルーブル(約10万ドル=約900万円)の報酬が支払われるという。ロシア生物医学問題研究所(IMBP Institute of Medical and Biological Problems)には、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)からも宇宙飛行士が、国際宇宙ステーションに長期滞在する場合の、閉鎖異文化環境下での長期滞在時の心理的・生理的適応過程と心理的ストレス軽減法の検討を行う実験に参加している。なお、惑星探査用のための実験ではないが、かつて1991年にアメリカのアリゾナ州に、バイオスフィア2という閉鎖系実験施設が作られ、8人の科学者が2年間滞在したことがある。また日本でも、ミニ地球のシミュレーションとして、95年に青森県六ヶ所村に(財)環境科学技術研究所により閉鎖型生態系実験施設(CEEF Closed Ecology Experiment Facilities)、通称バイオスフィアJが建設され、放射性物質を模したガスを注入して、今なお実験が続けられている。