受粉の際、雄の花粉管を卵細胞の場所におびき寄せ、受精に重要な働きをする花粉管誘引物質の名称。名古屋大学大学院理学研究科の東山哲也教授らが発見し、引き寄せるという意味の英語から、ルアー1(LURE1)、ルアー2(LURE2)と名付けた。この研究成果は2009年3月19日発行のイギリスの科学誌「ネイチャー」の表紙を飾り、掲載された。植物の花粉がめしべの柱頭に付着すると、花粉管が伸び出し、めしべ内部の胚珠に到達し、受精が行われる。この現象は1869年にはじめて報告されたが、なぜ複雑なめしべの中で、花粉管が迷わずに胚珠まで到達できるのかは140年来の謎だった。東山教授らは、2001年、トレニアという植物を使い、卵細胞の隣にある助細胞から誘引物質が分泌されていることを発見。さらに助細胞の遺伝子を調べ、そのうち2つの遺伝子から作られる2種類のたんぱく質が、花粉管誘因物質であることを突き止めた。この発見により、植物の受精のしくみが明らかになり、さらにほかの植物でも誘引物質を見つけられれば、これまで交配が不可能だった植物間での交配も可能になるものと期待されている。