振動力発電とは、音や振動などの動的エネルギーから電気エネルギーを得ること。発電(electric power generation:generation of electric power)は、自然界にあるさまざまなエネルギーを電気エネルギーに変換することをいい、高低差を利用した水の落下エネルギーや風力エネルギー、熱エネルギーなどを、タービンで変換して電力を得るのが一般的である。また最近ではシリコンやガリウム・ヒ素を利用して光エネルギーから電気を得る太陽光発電が注目されている。一方、どのような微弱な動的エネルギーでも電気エネルギーに変換することは可能であるが、微々たる電力しか得られないために、これまで顧みられることは少なかった。家電機器のリモコンなどは、微弱な電力しか要さないが電池を内蔵する必要があり、電池が劣化すれば用を果たさない。NECエレクトロニクスとベンチャー企業の「音力発電」は、ボタンを押す動作そのもので起電して、信号を送信するしくみのテレビリモコンの試作機を開発し、2009年11月18日からパシフィコ横浜で開催された「技術展覧会(Embedded Technology 2009)」に出展。試作機の横7cm×縦15cmというサイズは小型化への課題はあるものの、電池は不要である。両社はメーカー側に対し、11年度までに電池不要のリモコンの実用的な提案を行いたいとしている。この発電技術は、06年に東京駅で自動改札機を通過する客が床を踏むことで得られる電気エネルギーの実証実験を実施したことで知られる発電床の技術を応用して、小型化高性能化を図った振動力発電機によるもので、「振力電池」と称している。音力発電は、慶應義塾大学大学院生の速水浩平社長が、06年に起業したベンチャー企業。電気を利用する場所で発電する「地産地消」の電気版を目指して、これまで捨てられてきた廃エネルギーの有効活用を図るための技術開発を行い、人の声や音で発電する発電機などの開発に携わっている。「発電床」は株式会社音力発電、「振力電池」は速水社長による登録商標。