原子力発電所で深刻な事故が発生した際に、放射性物質がどのように拡散するかを全国16原発について計算したシミュレーションの汎称。原子力規制委員会が2012年10月24日に公表した。放射能拡散予測、あるいは原発拡散予測などと、メディアによって不統一な呼び方がなされている。各原発において、(1)福島第一原子力発電所事故と同等量の放射性物質が放出されるケースと、(2)すべての原子炉で炉心溶融が起きて放射性物質が放出されるという最悪のケースとの2パターンを想定する。そのうえで、各パターンについて、11年の1年間の気象データをもとにしつつ、各原発の基数や出力に応じて拡散量を16方位ごとに計算したものである。国際原子力機関(IAEA)が示す避難基準は、「外部被曝と内部被曝を合わせた1週間の積算被曝量が100ミリシーベルト」に達する地域であるが、(2)のケースによるシミュレーションの結果、この値が原子力防災の重点区域の新しい目安である「原発から半径30キロ」を超えてしまう可能性が4原発に対して算出された。しかし、公表以来、方位の情報入力などに誤りがあったことが度重なり発覚。拡散する方位などの訂正が続き、防災計画の見直しを迫られている各自治体を混乱させ、同年11月8日には、全国16原発すべての予測を見直すことを決定した。同委員会によれば、実際にシミュレーションを作成したのは、委託先の原子力安全基盤機構(JNES)であるうえ、シミュレーション結果の照合や確認は行わず、データ自体ももっていないなど、チェック態勢の甘さを認めた。また、このシミュレーションは、山や平地などといった地形のデータを反映させていないなど、計算の条件が不満足である点も指摘されている。