染色体をX字形に形作るうえで重要な役割を担うたんぱく質。大阪大学の松永幸大講師らのグループが発見し、2007年7月26日付「Current Biology」オンライン版にて発表した。染色体はDNAがまとまったもので、男性だけがもつY染色体を除いて、X字形をしている。この形は、同じ遺伝情報をもつ2本の染色体がつなぎとめられることで成り立っており、細胞が分裂する際に2本に分かれ、二つの細胞に移動する仕組みになっている。同グループは、PHB2(プロヒビチン2)というたんぱく質が減少すると、2本の染色体をX字形につなぎとめる作用が低下し、遺伝情報がバラバラに散ってしまうため、細胞分裂が失敗することを突きとめた。このPHB2は、細胞の中にあるミトコンドリアの形成や、排卵を促す女性ホルモンの作用を抑制する働きをもつことがわかっており、このたびの発見によって、三つの働きを担うことが判明した。このことから、三つの顔をもつ仏教の神、阿修羅にちなんでこの名が付けられた。染色体の分配や形の異常が引き起こすがんのメカニズムの解明や、その治療薬の開発にもつながるという。