港湾や湖などで見られる、水面の高さ(潮位)の急激な変化。あびきは九州西地域における名称で、漁網が流されるほど激しい潮流が起こることから、「網引き」が転じたものといわれている。一般的には副振動。ほかに静振(せいしん)、セイシュともいう。台風や低気圧による小さな気圧変化で、最初は水面にゆるやかな上下振動(長波)が発生し、それが沿岸域へと伝わる間に湾や湖の地形、水深変化によって共鳴増幅が起き、大きな水位の昇降になるものと考えられている。とくに中国大陸から日本に向けて、低気圧が発達しながら進む時に発生しやすい。発生源で数cm程度だった潮位変化が、日本沿岸に到達する頃には100cm以上になることもある。2009年2月24日夜から25日にかけて、長崎県や鹿児島県で観測されたあびきは、5~30分の周期で最大約160cmの潮位変化をもたらし、漁船の転覆や住宅の浸水などの被害を出した。なお副振動に対し、満潮と干潮による周期的な潮位変化(潮汐)は、主振動として区別されている。