理化学研究所と高輝度光科学研究センターが兵庫県の播磨科学公園都市に建造している、日本初のX線自由電子レーザー施設の愛称で、2011年3月29日、施設の完成とともに発表された。X線自由電子レーザー(XFEL ; X-ray free-electron laser)とは、(1)自由電子、すなわち金属の中を自由に動き回るような、束縛を受けていない電子を磁力で加速し、(2)それをS極とN極の電磁石をたがいちがいに数百個並べて上下に配置したアンジュレーター(undulator)の中で細かく蛇行させることで、(3)加速時に与えたエネルギーをX線のかたちで放射させ、(4)このX線を同期させてレーザーとしたもの。その波長は原子の大きさである1オングストローム以下となり、フェムト秒(1000兆分の1秒)というきわめて短い時間単位で振動するうえ、非常に鮮明であるため、物質の根源である原子そのものを直接観察することができるようになる。その効果は、基礎科学は当然のこと、原子一つひとつの状態のありかたが重要視される各種のハイテクノロジーや新薬開発などの高度な領域で絶大な威力を発揮する。SACLAは、電子銃から発射した電子ビームを3台の加速器を通じて加速し、このビームを約5メートルの間に277回蛇行させるアンジュレーターを18台使ってX線自由電子レーザーを得る構造となる。世界最大の大型放射光施設SPring-8(Super Photon ring-8GeV スプリングエイト)に隣接するかたちで06年度から建設が始まり、目標としていた8ギガ電子ボルト(8GeV=80億電子ボルト)のエネルギーをもつ、波長0.8オングストローム(100億分の8メートル)のX線の発生を達成した。今後、このX線を同期させるための調整や試験運転を経て、11年度末の本格始動を目指す。