古くから、大地震の直前に「動物が異常行動をとった」「おかしな雲が現れた」「ラジオにノイズが混ざった」などという奇妙な現象があったことが、事後になって報告されている。このような感覚的にしかとらえようのない事象を、地震の前兆と結びつけて、宏観異常現象と呼ぶ。「宏観異常」という用語は中国で使われていたもので、日本では「地震前兆現象」などと呼ばれてきた。精密な観測機器によって地殻の状態のわずかな変化を感知し、地震の予兆をとらえようとする地震予知研究との接点はない。だが、大地震が発生するたびに、宏観異常現象の話題がもちあがることも事実。日本で1995年に発生した「阪神・淡路大震災」の際にも、「らせんを描く雲」「上下に伸びる月の光」「井戸の枯渇」「小動物の狂暴化」など、数多くの宏観異常現象が報告されている。2008年5月12日に中国の四川省で発生したマグニチュード8.0の大地震に際しても、その一週間前に、同省綿竹市でヒキガエル数十万匹が集団移動する様子が見られたという。大地震の発生前には、電気を帯びた大気や地電流、電磁波などが生じることが確認されており、これが自然界や小動物に影響を及ぼすとも考えられているが、推測の域を出ておらず、また「こういう現象が起これば確実に地震が発生する」という明確な相関も見出されていない。個人個人が感じた主観を地震予知に持ち込むことには異論があり、先進各国における研究の本筋ではないのも実情である。