窒素酸化物の一種で、一酸化二窒素とも呼ばれる。化学式はN2O。二酸化炭素やメタン、フロン類などとともに「気候変動枠組条約」や「京都議定書」で排出規制が課せられている温室効果ガスのひとつ。亜酸化窒素は、大気中や海洋、熱帯土壌などから自然発生するほか、窒素肥料をまいた農地や自動車・工場の排気ガス、下水処理や家畜の排出物などからも発生し、その温室効果は二酸化炭素の310倍あるといわれている。一般には、歯科麻酔の笑気ガスとして利用される。2009年8月、地球環境の変化を調査・予測するアメリカ海洋大気局(NOAA)の研究チームは、現時点で亜酸化窒素がオゾン層を破壊する最大の要因になっているという調査結果を発表した。太陽光の有害な紫外線を吸収するオゾン層を破壊する物質には、フロンやハロン、四塩化炭素などがあり、これらはオゾン層破壊物質として1987年採択の「モントリオール議定書」で規制されているが、亜酸化窒素はこの対象に含まれていない。特に、オゾン層破壊の主原因とされるフロンは減少傾向にあるため、研究チームは亜酸化窒素がフロンを超える最大のオゾン層破壊物質になるという結論を出した。