暖かく湿った空気が温度の低い海面や地面に移動する際、下層から冷やされてできる霧のこと。気象学では一般に、水平方向の大気の移動を移流(advection)、鉛直方向の大気の移動を対流(convection)と呼ぶ。移流霧の中でも海上に発生するものを海霧(うみぎり、かいむ)といい、じり、ガスなどと呼ぶ地方もある。暖流と寒流が接しているところに発生しやすく、北海道の根室沖や釧路沖、東北の三陸沖で夏季にみられる霧は、濃く範囲が広いため有名である。移流霧にはほかに、季節風に伴い沿岸地方で発生するモンスーン霧、海洋性熱帯気団の中に発生する熱帯気団霧などがある。1912年のタイタニック号沈没など、移流霧による視界不良が原因とされる船舶事故や航空事故がしばしば起こっている。2010年2月25日には、移動性高気圧と南からの暖かい風が東京湾に流れ込んだため移流霧が発生。この濃霧により羽田空港国内線のダイヤは大幅に乱れ、同日夜までに180便以上が欠航、3万人以上に影響が出た。