製造方法などの違いによって、化学薬品の成分に生じる特徴のこと。人によって指紋が異なるように、同じ種類の薬品でも製造方法や製造地などが異なると、結晶の構造や不純物の割合には固有の特徴が生まれる。この特徴である薬物指紋を比較する分析方法は「薬物の異同識別鑑定」とよばれ、複数の薬品が同一のものかどうかを判断することができる。主に覚せい剤のからむ犯罪の捜査に用いられ、押収された覚せい剤の薬物指紋から、製造地や密輸ルートを絞り込むなどの成果をあげている。1998年に和歌山県で発生した毒物カレー事件では、カレーに混入されたヒ素の薬物指紋を分析し、被告人の周辺で発見されたヒ素と同一であることを突き止めた。2007年末から08年初頭にかけて各地で被害が相次いだ、中国製の冷凍ギョーザに殺虫剤のメタミドホスなどが混入していた事件でも、薬物指紋の分析が捜査に導入された。その結果、混入していた薬物から、日本で販売される殺虫剤には存在しない成分が検出され、薬物は中国製とする見方が強まった。