動物や植物、微生物などの遺伝子情報を資源としてとらえた呼び方。突然変異や自然淘汰(とうた)、選択による適応的淘汰など、地球上の生物の遺伝子情報は、長い年月をかけて積み上げられてきた、人類全体にとって貴重な資源であるという考えから生まれた。バイオテクノロジーの発達により、動植物や微生物の遺伝子を使って医薬品や化粧品、健康食品などさまざまな製品が開発されるようになった。しかし、自然が豊かな発展途上国から採取した遺伝資源を、技術や資本で勝る先進国が開発するケースが多いため、自国の資源から生まれた利益を先進国が独占している、という途上国からの非難が強かった。そこで1992年に採択された生物多様性条約では、遺伝資源を提供した国にも利益を分配するなどのルールとなる「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)」に関する国際的な枠組みを策定することが決められた。ABS は2010年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の主要議題の一つとなっている。