立体テレビ(3Dテレビ)に映し出された映像に、触覚や力覚に関する要素を加えて、「触れる立体テレビ」を実現するシステム。産業技術総合研究所の中村則雄主任研究員が開発し、2010年8月25日に発表された。立体的に映し出された対象物の手触りや感触が再現されるだけでなく、それを移動させたり変形させたりもでき、その重さや手応えも再現される。名前は、錯覚(illusion)、直感的(intuitive)、ひらめき(insight)、それらの創出を支援する空間(space)というコンセプトに由来し、(1)リアルタイムVR空間生成システム、(2)錯触力覚インターフェース、(3)マルチ・ポジション・トラッカーシステムの三つのユニットで構成される。(1)は、ある対象物を立体表示するための情報と、ユーザーに感じさせるための手触りや重さなどの情報を統合して計算処理するシステムで、ユーザーの指の動きに応じて、対象物の状態変化や触覚・力覚に関する成分変化を連続計算していく。(2)は、同研究所で以前開発されたジャイロ・キューブ・センサス(GyroCubeSensuous)を採用したシステムとなり、内蔵した二つの回転体を制御することによって、任意の方向に任意の大きさの回転力、力、振動、衝撃を作り出すもので、左右の手の人さし指先端などに装着する。(3)は、(2)の装置に取り付けた位置測定用のマーカーを基に、指の動きを三次元的に追跡するシステムで、複数のカメラを使い、6方向から死角なく測定する。これら三つのユニットを相互に連動させることで、立体映像に触覚と力覚を融合した新たなバーチャルリアリティーを実現する。ビデオゲームや手術のシミュレーションへの応用が考えられ、小型化・高機能化とともに、スマートフォンや各種家電などへも対応していくという。