東京下町の町工場が中心となって進める、フリーフォール型深海探査シャトルビークルの開発計画。大阪の町工場が結集して製造した人工衛星「まいど1号」に刺激され、杉野ゴム化学工業所(葛飾区)の杉野行雄社長が地場産業の活性化を図るべく2009年7月に提案。中小企業に参加を呼びかけ、信用金庫や大学などの協力も得て同年12月にプロジェクト準備委員会を発足させた。当初は、マリアナ海溝の最深部と同等の深海1万1000メートルで活動できるケーブル操作型ロボットを想定していたが、資金捻出の問題などが表面化するにつれて脱退する企業が相次ぎ、プロジェクトが停滞していた。その後、機能を限定してコンパクト化を図る案を取り入れ、日本海溝の最深部と同等の8000メートル級の深海底にフリーフォール(自沈)で着底し、作業後に重りを切り離して浮上するというシャトルビークル(往還機)方式に方針変更することを決定。この改定案が11年9月に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「実用化展開促進プログラム」に採用され、プロジェクトが再始動。翌12年1月17日には、杉野ゴム、浜野製作所(墨田区)、パール技研(千葉県白井市)、ツクモ電子工業(大田区)の4社と、当初から協力関係にある東京東信用金庫(ひがしん)(墨田区)、東京海洋大学、芝浦工業大学、海洋研究開発機構による共同開発契約調印式が執り行われ、13年度中の完成を目指すこととなった。新たに考えられた本体は、各種の機器を耐圧性のガラス球に入れてユニット化し、それらを用途に応じて組み合わせるものになり、着底用の足と、フリーフォールのための重りを備え、海面に浮上したあとはGPS(全地球測位システム)で位置確認して回収することになる。無接触充電システムを搭載し、撮影データなどの送受信も無線で行うために、機体を分解せずに何度も使用できる。深海で新たな魚類を発見して3Dハイビジョン撮影をしたり、海底資源の調査のために深海の泥を採取したりする予定。