原子力発電所事故の際、電気事業者から送られてきた原子炉のデータを元に、コンピューターが事故の状況把握や進展予測を行うシステム。原子炉監視システムともいう。原子力安全・保安院の委託により原子力安全基盤機構が運営。システムは、炉の温度や圧力などを常時把握する「プラント情報表示システム」、その情報に基づき原子炉や格納容器の状態を判断する「事故状態判断支援システム」、放射性物質の放出量などを予測する「解析予測システム」などで構成される。ERSSが算出したデータは、放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」も使用する。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故の際は、外部電源の喪失により原子炉のデータがERSSに届かず、そのためSPEEDIも正確な試算を行えなかった。しかし、12年1月18日、福島第一原発からERSSにデータを送信する装置につける予備の非常用電源が、そもそも事故の前から未接続のまま放置されていたことが判明。東京電力、原子力安全基盤機構ならびに原子力安全・保安院の危機管理の甘さがあらためて問われる事態となった。